どれほどの時間を共有しても、どれだけぬくもりを求めても、彼女は常に謎めいた存在で、こうして腕に抱く権利を得た今でさえ、彼女について正しく知っていることはただ一つだ。
「あなたは嘘つきですね」

唐突な呟きに隣を歩いていた彼女が顔をあげた。見上げる瞳がいつもより大きく見えるのは、面食らったふりをしているだけ。本当はきっとどんな言葉にだって動じたりしない。

「何を言い出すんですか」
「いえ別に。真実を言ったまでです」

だからこちらも無表情のまま言ってみせれば彼女は眉根を寄せた。


こんなに近くにいるのに、明かされない彼女の本質。
その瞳が映すものを、その腕が示すものを、その笑顔が隠すものを、その言葉が暗示するものを、何一つ理解できない。
積み重ねた時間が、二人の間にいったい何を残したというのだろう。
彼女への感情は愛や思慕の裏側に空虚と無力感がつきまとう。


「確かに真実かもしれません」

笑顔のまま認めて、彼女がふと立ち止まった。見慣れた笑みの中に切なさに似た何かを感じるも、それを素直に信じられない。
離れすぎては声も届かなくなるので同じく立ち止まると、彼女は短いスカートの後ろで両手を組んで首をかしげた。

「でも先生。私は嘘だけつくわけではありませんよ?」

思いがけない部分否定に目を瞠ると、彼女は軽やかに駆け出した。衝撃と共に腕の中に飛び込んできたのは嘘つきな彼女で、そうとわかっていても胸に頬を寄せて目をつむる仕草に都合のいい願望が沸き起こる。

せめてこの瞬間だけは彼女の真実であるように……。



嘘つき確立99%



可符香から先生への愛がなさすぎるので、恋人設定を書いてみる。
でもやっぱり先生→可符香の愛が大きすぎて空回り。
可符香のデレが想像できない……orz!!!(致命的)