生まれつきの気質なのか、過去にそうさせる何かがあったのか。
彼女は己の思想に絶対の自信を持っている。
いささか固執しすぎているところもあるが、優柔不断で自身の言動に責任を持てない大多数の日本人に比べれば、見習うべき確固とした自己だ。

彼女の中にすっと真っ直ぐ立てられた芯は、決して妥協を許さない。常に自分自身を制御し、監視している。
それゆえ彼女は美しい。厳しく潔い生き方はどこか神聖な雰囲気すらまとっている。近寄りがたいと思ってしまうのは、そのせいだろう。

確かに彼女はとても強い。苦痛や孤独に耐えられる。どんなに辛くても何事もないかのように振舞うことができてしまう。
しかしだからと言って、いつでも一人で立っていられるわけではないのだ。厚く張った虚勢は必ずバランスを崩し、彼女を縛り付ける。まさか彼女が自分のルールにもがいているなんて、誰が知っているだろう。

そう、ここだけなのだ。彼女が弱さや涙を見せられるのは、唯一この腕の中だけ――。

「僕だけは君を受け入れるよ。僕だけが君を理解してあげられるよ」
そうやってすりこんだ。
彼女がここにしか逃げられないように。必ずこの場所を求めるように。

「久藤くん、久藤くん……」
か弱い声が呼ぶ。いつかこの声が僕にだけ語りかけるように。

「涙が止まらないわ」
この澄んだ瞳が僕だけを見つめるように。

「落ち着くまでここにいるから、大丈夫だよ。安心して」
この体温を独占できるように。

わずかに強張った肩の力が抜けた。ここを安全な場所だと信じる彼女が身体を預けてくる。
もう少し、あと少し。彼女を囲う檻の完成は近づいている。

「木津さん、君が好きだよ」

囁いた僕は、彼女を抱く腕に力をこめた。



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准くんがいつのまにかヤンデレ要員になってる……。
穏やかな人って心の中で何を考えているのかわからない、のが怖い。
でも独占欲な准くんはけっこういい……と思う。